リテール版の危機

 リテール版とは小売店で売られる物、つまりゲームのパッケージ版の事である。既に御存知の様にPCゲーム業界ではダウンロード販売が年々シェアを伸ばしてきており、PCゲームのリテール版の存在価値は低下の一方という状況にある。まずは両者の利点と欠点をまとめてみよう。


 [ダウンロード販売の利点] (同時にリテール版には無いので欠点となる事項)


◎送料が掛からない分購入価格が安くなる
◎現地での発売日にプレイ出来る(一部アンロック時期が延びるゲームはあり)
◎一々認証の為にゲームのメディアを入れ替える必要が無い
◎一元化されたインターフェースでゲームを管理可能



 ダウンロード販売でしか買えないゲームがある, (セールを含めて)販売価格が安いというのも利点だが、これは逆にリテール版にも言える事で、リテール版でしか買えないゲームもあるし、同じくリテール版の方が安いゲームというのもある。リテール版は物理的にスペースを取るので、売れ残ったゲームは限られた店の棚からワゴンセールへと移されるが、ダウンロード販売では在庫という概念が無いので価格をどうするのかはそれを委託している販売代理店次第となる。


 そして中堅以下の代理店に多いのだが、どれだけ無名だったり低評価を受けようが値段は変えないという姿勢で、ダウンロード販売でセールが来ても値段は下がらないという物が在る。また大手代理店の扱っているゲームでも、同じ様に評価が高くないのにもかかわらず、一向に値段が下がらないという物も幾つかある。それに対してリテール版では不人気作は順当に価格が下がるので、送料を加えてもずっと安く買えるというゲームも多い。ここはダウンロード販売にこだわると、高価で買うか何時かは下がるのを待ち続けるしか無いので不利となる。



 [ダウンロード販売の欠点]


×クレジットカード必須なので持っていないと(ほぼ)買えない (リテール版でも国内のショップではなく海外から買うなら同じ)
×販売元が倒産した際に所持ゲームがどうなるのか不安(プロテクトが掛けられている物)
△日本語版の対応度が低い (これは人によるが、日本語版が欲しいとなるとダウンロード販売では扱われないケースが多い) 
△巨大なファイルをダウンロードする環境が無い(これは年々減少している)
△Modの互換性 (発売時点でパッチ適用済みの場合or強制アップデート仕様だと、昔のバージョンでしかプレイ出来ないModが使えない)


×販売地域制限
 レーティングが日本(CERO)の許容する規制内容を超えている, 日本国内のメーカーからのゲームで国内にて日本語版が用意されている, 日本代理店から遅れて発売予定等の理由から、日本からは(海外発売と同時には)購入出来ないタイトルが在る件。リテール版の方は海外から買うなら問題は無いのでそれは利点となるが、一部はシリアルキーの登録自体が国籍チェックではねられてしまうゲームも稀にある。


△シリアルキーで登録されるので転売出来ない
 これは人によるが、中古での売り買いを基本にしている人には大きな問題となる。しかしリテール版でもシリアルキーの登録がアカウントに対して成されるゲームでは同じ話になる(Steam必須のゲーム等)。



 話を元に戻して、これまでにも私は自分がリテール版購入派だというのを何回か書いてきたし、リテール版の売上比率が減ってしまうと、よりダウンロード販売の方に重点が置かれる様になっていくので、なるべくリテール版の方を購入するというようにしてきた。しかしそれも徐々に危うくなって来ているという感は否めない。


 リテール版を購入する大きな理由というのに、物理的な商品を手に入れる事で購入欲を満たすという件がある。しかしこれは個性的なパッケージが消え始めてから徐々に低下しており、近年ではよりパッケージの簡素化が進んでいる。例えば私が最初にダウンロード販売で購入したのはLeft 4 Deadだったが、その理由はValveのゲームはSteamスタートの当初からマニュアル無しで一枚の簡素な紙だけという仕様であり、中の媒体は単なる初期データ入りの物という色が濃く、その様な事務的なパッケージでは購買意欲をそそられないからである。


 そしてこういった構成のリテール版が近年増えているのは確かであり、マニュアル無しという物はさすがに少ないが、マニュアル自体の内容が非常に簡素という代物は良く見るようになった。あまり他のジャンルの物は買っていないので何とも言えないが、アクションゲームは結構「マニュアルの内容を省略しても問題無いだろう」と受け取られるケースが多そうではある。


 それと販売代理店側からすると、まずはマニュアルの印刷コストが削減出来るというのが大きい。次にダウンロード販売サイトを通して売る際にはリテール版と同じく手数料を店側に払わないとならないが、自社運営のダウンロード販売サイトから直に売るならば手数料は生じない為に、ダウンロード販売版の方が儲けが増える事になる(サイト運営の設備投資は必要だが)。EAのOriginの様なサイト運営に他の大手代理店も乗り出してくれば、当然リテール版の位置付けは低下せざるを得ない。



 よってこの流れが加速するのは残念ながら間違いなさそうで、そうなると簡素なインストールの方法程度を記載したメモ紙にPDF形式のマニュアルを同梱するだけというゲームが増える。そうなってしまえばリテール版の購入意義は薄れ、買う事も減ってしまうのではないかという気がする。近年は新作を発売直後に購入するというケースがほとんど無く、ダウンロード販売での価格よりもリテール版の方が安いタイミングで買ったり出来ている事が多いのでまだ良いが、また新作を早期に買うようになればリテール版のデメリットの方が目立つので、ダウンロード販売の方に流れて行きそうだ。裏を返せば新作即買いの人にとっては、もはやリテール版の価値は相当低下している状況にある。


 とりあえず今は素っ気ないパッケージに切り替える販売代理店が増えない事を願う位しか無い。

「リテール版の危機」への1件のフィードバック

  1. Seiryu_PGD: ken
    私はむしろ、DLのほうがありがたいです。
    仕事で忙しいと店舗に行くのはもとより、ネット通販すら探すのが大変です。
    主にSteamですが、新作を探す手間が省けますし、インストールメディア探して右往左往することもなくなりました。
    普通なら見逃しそうな、知り得ないインディーズ系も沢山巡り会えましたし、パッケで買うより、遥かに買う本数は増えました。
    PC系ゲームの下火はそこかしこで言われますが、リテールに頼ってPCならではのゲームが死滅するより、DLで活路を見いだして生き延びた方がよっぽどマシです。
    PCならではの販路で、むしろ、この兆候は歓迎すべきとも思いますね。

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