多勢に無勢

 FPS&TPSといった3Dアクションが好きなPCゲーマーにここ数年問題視されている点として、ゲームのマルチプラットフォーム化というものがある。PCオンリーで制作されるのではなく、Xbox 360やPS3との同時開発となるゲームの事で、もはやそれが当たり前という所まで来ている。機種がPCのみという3Dアクション物は、コンソール市場が発達していない東欧諸国からというのがほとんどというのが現状である。


 PCゲーマーにこのマルチプラットフォーム化が嫌われる理由は、一言で言うなら「コンソールをメインターゲットにしてゲームが制作されるので、PCユーザーが蔑ろにされる」という事にある。例えばXbox 360やPS3よりも能力が高いクラスのPCを持っていても、それを限界まで使うようなゲームが出て来ないといった点が挙げられる。



 しかしこのマルチプラットフォーム化という点について、近年ではその様相が変わって来ている気がしてならない。ユーザー数が多いコンソールをメインにしてデザイン&制作されているのならば、同じゲームでもユーザーの満足度はコンソールゲーマーの方が高くなるはずである。しかしデータを調べてみると、そういう風にはなっていないという結果が出て来る。PCユーザーが低評価にした物は同じくコンソールでも低評価であり、三機種のスコアには大きな差は生じていない。


 リストは2007年以降に発売のFPSで、3機種全てで発売されていて、機種毎の内容に大きな変化が無い物をピックアップしている。GameRankings  によるゲームサイトの平均点と、会員によるユーザー投票が可能なサイトの中でもサンプル数が多いGamespotでの平均スコアを掲載。
 


 この評価点を付けているユーザーについて考えてみると、ゲームサイトをチェックしている事からコアゲーマーの比率が高いと言えるだろう。ゲームサイトのレビュアーも言ってみればコアなゲーマーである。つまりコアゲーマーにとっては機種が変わってもゲームに対する評価は似通っており、特にPCゲーマーだけが不満を感じている訳ではないという見方が出来る。ではその共通した不満の原因となっているのは何かというと、それはゲームのカジュアル化である。言ってみれば「PCゲーマー VS コンソールゲーマー」という対立図式だったはずのものが、現在では「全ての機種のコアゲーマー VS カジュアルゲーマー(ライトユーザー)」という対立の方が色濃く表れている状況になっている。



 そもそも何故Xbox 360の発売以来マルチプラットフォーム化が加速したのかという理由は簡単で、ゲームの制作資金が高騰しているので、対応機種を多くして出来るだけ売り上げを伸ばしたいからである。資金面に問題がないのならば、3機種それぞれに専用でゲームをデザインし制作した方が当然良い。しかしここに来てそのマルチプラットフォーム方式さえもが通用しなくなって来ている。それはゲームの製作予算(開発費+宣伝費)が想定外のレベルで上昇し続けているというのが原因。


 3Dアクション系というのは修練を必要とする分比較的コアゲーマーの割合が多いジャンルである。(逆に普通のRPGなどは謎解きやレベル上げがメインなので、攻略本や友人に頼ったり、時間を掛けてレベル上げさえすればちゃんとクリア出来るという意味で、カジュアルなユーザーにも向いている万人向けのジャンルとなる)。そこで一機種のコアゲーマー向けに作っても売り上げには限界があるので、他機種のコアゲーマーも取り込むという狙いでマルチプラットフォーム化に移行していった。ところが制作予算の額が飛躍的に上昇した結果、3機種全てのコアゲーマー向けに売ってもそれを回収するのが難しいというレベルにまで来てしまったのである。


 そこで各社が目指すようになったのが、ゲームのカジュアル化という方向性である。購買ターゲットとするユーザー層を広く取る事で、更なる売り上げのアップを狙うようになっている。しかしカジュアル層を取り込むには一つ大きな問題があって、それは彼等はインターネットやゲーム雑誌の様な媒体から積極的にゲームの情報を収集しようとしないという点である。そこで様々な広告媒体を用いた宣伝費用も増大化の傾向にあり、特に北米や欧州では広大な上に地域による差が大きいので、広範囲での効果的な宣伝を行うのが難しい(日本のようにTVのCMが効果的ではない)という面から、本気でやると莫大な費用が掛かるという風になっており、それが更なる製作予算の上昇を招いている状態にある。
 あまりマーケティングの費用については公開されないが、有名な所ではMSのHalo 3が三千万ドル(約30億円)、カプコンのLost Planetが二千万ドルである。よって世界的な規模でのAAAクラスの大作となると、やはりこれらと同程度の宣伝費が注ぎ込まれていると考えられるだろう。となるとゲームの制作費の方が既に二千万ドル以上が当たり前で、トップクラスのゲームならばそれ以上に上昇しているのと合わせると、制作費の合計は途轍もない額にまで上昇しているのは間違いない。


 しかし百万本売った程度では成功とは言えないというレベルになってくると、コアゲーマーのみをターゲットにしても厳しいものがあるし、また他のメーカーとの競争も当然そこには存在している。そこでより広い範囲のユーザー層をターゲットにしようという事で、目を付けられたのがカジュアルゲーマーである。HD機市場におけるカジュアルゲーマーとコアゲーマーの比率は分からないが、とにかくより広範囲に投網を投げてユーザーを捕まえようという姿勢が顕著になっているのは確かである。



 では具体的にゲームがカジュアル化すると何が変わるのかについて見ていこう。


1.難易度の低下
 やはり一番目に付くのはこれだろう。PCのFPSゲームを例に取ってみても、Normalの難易度での平均的な難しさの度合いは、過去に比べて明らかに下がって来ている。その分Hardの難易度もやや下げてコアゲーマーにはそれを用意し、難しいゲームが好きなプレイヤー用には更に上の4つめの難易度を設けて対応するという傾向が見られる。その他のポピュラーな手法としては以下の様な設定が存在する。


*Easyの下に“Very Easy”の様な更に易しい難易度を設けて、苦手な人はそれを最初から選べるようにしておく
*ゲームの途中で難易度を自由に変更可能にする
*連続して同じ場所から死んだ際には、段階的に難易度を自動調整してクリア出来るまでそれが続けられる
*公式にチートメニューが用意されており、裏技の様な特殊な行為をしなくても、そこでチートコードさえ入れれば様々なチートが可能にされている

 特定のゲームでの不満として知られる実例を幾つか挙げると、Prince of Persiaではパートナーの助けによりアクションに失敗しても死なないというデザインが、「やたらと死んでこそのPoP」という点でファンの不満を買った。

 或いはBioShockでは死亡後の復活に何のペナルティも無い上にゲーム世界はそのままなので、強敵相手でも繰り返し挑めばダメージが蓄積して何時かは倒せるという仕様だった。この場合は本来のデザインでは難易度に応じて復活時にコストが掛かるという仕様だったのだが、テストプレイの際に復活の為の金がなくなってデッドエンドになるプレイヤーが続出したので、一切の金が掛からないで復活出来るという形に変えたそうだ。率直に言ってBioShockは金がなくなるまで繰り返し死ぬような難易度のゲームとはとても思えないので、テスターの多くはこういったアクションに不慣れなカジュアルゲーマーだった、つまりそのクラスのユーザーを優先して作られていたのだと思われる。


 Dead Spaceのレビューでも書いたが、サバイバルホラーの様なジャンルでもこういう現象は起きている。本来の意味であるサバイバル感を出すには簡単にしては不味いのだが、その「難しさこそがサバイバルホラーの持ち味」と理解してくれるコアゲーマーだけをターゲットにしたのでは売り上げ的に厳しいので、いろいろと緩くして簡単にしないとならない状況にもなっているのだ。それが嫌なら比較的低予算で制作出来てコアゲーマーのみをターゲットにしてもOKな携帯機等に機種を移すしかない。



 個人的な意見としては、カジュアルなユーザー向けに救済方法を設けるという事自体は良いと思う。特定の難所を抜けられずにその後の進行を放棄されるよりは、何らかの形でクリアさせて続けさせた方が良いだろう。プレイしている当人が先に進めたいと考えているなら尚更だ。制作側もやはり最後までクリアして欲しいと願っているはずであり、それを援助するシステムを組み込むのは悪い事ではない。


 しかし現在ではメーカー側の対応が疎かというか、コアゲーマーへの配慮が足りていないのが問題になっている。例えば途中で難易度変更が行えないゲームはまだ多く、Normalでプレイを始めたが簡単で物足りないとなった際に、最初からやり直すかクリア後にリプレイしか対応策が無い。仕方なくそのまま最後まで行っても、それはプレイヤーの満足度を大きく削ぐ要素となる。プレイ前に適切な難易度を選べれば良いのだが、Normalについての説明文は「FPSに慣れたゲーマー向けの難易度」という表記で昔から変わっておらず、既にそれが適切ではないゲームが数多く出ている。


 或いは自動的に難易度を調整する機能も、そういう風にゲーム側に手加減されてクリアするのは不本意と考えるプレイヤー向けには、その機能が働かないようにする設定を設けておくべきだろう。結論として様々なプレイヤーに適切な難易度を提供出来るのならば、この易しい方への難易度の設定の幅を広げるという方向性はプラスに働くが、現在はそうなっていないのでコアゲーマーからは不満が出ている。



2.操作性の簡素化
 第一に操作性が複雑なゲームはカジュアルゲーマーには嫌われる。数時間プレイするとようやく慣れてくる様な物は向いていない。しかしそのゲーム性から複雑な操作が必要とされるゲームもある訳で、そういったゲームは設計の段階から避けられて消えて行く物が増える事になる。操作がシンプルなのは良い事だが、それ一辺倒になるのはコアゲーマーからするとあまり良い事には思えない。


 次にカジュアルなゲーマーにアクションゲームが避けられる理由として、操作が上手く出来ないというのがある。だが高速且つ的確な操作が要求されるリズムゲーム(音ゲー)はカジュアルゲーマーに好まれており、限定されたボタンを的確に押していくタイプならば抵抗感は無いと見られる。(併せてアナログスティック等を使用した動作になると苦手とされる)。そうなるとゲームの操作もそれに合わせて単純化しようと考えるのは当然の流れ。例えばQTE(画面に表示されたボタンを素早く押すイベント)も本来はカットシーンでのユーザー操作を可能にするという意味合いだったが、ボタン押し要素はカジュアルゲーマー向けなので採用数や場面数が増えてくる。そして当然これを面白くないと考えるコアゲーマーには受けが悪い。


 更に操作するキャラクタの動作にも簡素化が採り入れられたりしてくる。カウンターアタック動作などはその一例で、敵の攻撃タイミングを見てボタンを押せば、自動的にキャラクタが動いて攻撃してくれるという物。攻撃等の動作を出す時も、スティックを使った操作よりはボタンのみの操作でいろいろと繰り出せるようにしたりするのも同様。敵に囲まれた時でもボタン操作で回避が出来る様な、ピンチからの脱出操作を加えるなども同じ意味合いになる。要は移動やエイムの操作をそれ程正確に行わなくても大丈夫な設計にするという改変である。Tomb Raiderシリーズの様な物でも、アクションボタンの使用回数を減らすといった変化が見られる。これもゲームによるとは言えるが、操作がシンプルで単純になり、操作キャラクタが自動的に動くという点を嫌うコアゲーマーは多いだろう



3.グラフィックス偏重
 ゲームはグラフィックスが全てでは無い。アクションゲームでは他のジャンルに比べるとグラフィックスの重要性はかなり高いが、それでもグラフィックスはゲーム評価の一基準でしかないのは確かである。しかしゲームの情報を積極的に得ようとしないカジュアルゲーマーに対しては、グラフィックスの良し悪しは非常に大きな影響を及ぼす。どうしてもグラフィックスの優れたゲーム→スタッフが優秀→よってゲーム内容も優秀、という連想が働いてしまうからだ。一番重要なのは人気シリーズの続編かどうかや、クリエイターが誰かという点だと思うだが、HD機ではその次がグラフィックスと言って間違いないと思う。
 実際にゲームが発売されてからなら「グラフィックスはそれ程ではないがゲームは面白い」という評判が聞けるようにもなるが、そもそもそういった評判の情報すらも自分から集めようとしない層にはクチコミというのも困難になる。また一番盛り上がる発売直後に出来るだけ売りたいという思惑もあるし、それには事前の宣伝が重要でクチコミには頼れない。よってゲームの宣伝トレーラーやデモ映像によって、どれだけゲームが凄いのかを発売前にアピールしたい。それにはグラフィックスでアピールするのが効果的なので、グラフィックスには特に力を入れるという図式である。


 しかし現在のゲームはそのグラフィックス系のコンテンツの制作に多大な人員と費用が掛かっている状況なので、幾ら多額とは言え制限された予算内では、肝心のゲームプレイの方の開発に回される人と予算が少なくなるのは避けられない。その結果グラフィックスは良いしゲーム内の街並みもリアルなのだが、ゲーム内容の方はあまり面白くないという物が出来上がってしまう。



4.Co-opに対応
 Co-opに対応するゲームが増えて来ているが、これには二つの側面がある。一つは対戦形式のマルチプレイはカジュアルなゲーマーには受け辛いという点。同じレベル同士で対戦出来るシステムが整っているならともかく、普通に対戦に参加しても苦手なのでボコボコにされるだけでは面白くもない訳で、これでは満足して貰えない。そこで対戦ではなくCo-opというやり方の方が楽しめる可能性が高いので、それを採用するゲームが増えて来ている。対戦に比べるとCo-opはそれ程繰り返しは楽しめないが、シングルプレイを重視するカジュアルゲーマーにはCo-opの方が受けるというのもある。これはコアゲーマーにとっては好みの問題になるが、Co-opに力を入れるあまりに対戦の方がおざなりにされたりするのを嫌う人もいる。


 もう一つはガイド機能としてのCo-op。ゲームをクリアするのにシングルプレイとCo-opの区別を付けないシームレスなゲームが徐々に出て来ており、そこではCo-opで進めてもその進行がシングルプレイの方にも同様に適用される。つまり自分にとっての難所をクリアするのに友人とのCo-opや、ネット上で誰かに助けてもらって進めるという方法が可能である。最初から最後まで助けを借りてのクリアも可能であり、これをどう捉えるかはともかく、カジュアルなユーザーがゲームをクリアするのには役に立つ機能であるのは間違いない。確かに独力ではないがチートを使ってクリアするよりはマシだとも考えられる。


 これがコアゲーマーにどういう風に影響するのかは微妙な所だが、このシステムを実現するにはシングルプレイ中にも常に、Co-opで他のプレイヤーが操作する仲間のキャラクタがいないとならない。2人Co-opが可能ならば最低1人となる。(Co-op時に人数が増える方式だと、難易度バランスやマップデザインの調整が難しい)。よって1人以上の仲間と一緒に戦って行く形式が嫌いな人には好ましくない要素になるし、またシングルプレイ時にその仲間を受け持つAIが低レベルだと、Co-opの為に存在しているそのキャラクタがマイナス要素となる恐れもある。 



5.キャラクタの成長や必殺技
 アクションゲームではプレイヤーの操作するキャラクタは成長せず、純粋にプレイヤー自身が上手くなって行って、段々と難しくなるのに対応するというのが普通である。しかしこれはカジュアルゲーマーには向かず、もし操作に慣れる事が出来なければ後半に行く程苦しくなる。そこでキャラクタ自身や装備が強くなるという要素を採り入れて埋め合わせるか、スローモーションに出来るという様な特殊能力を持たせてバランスを取る方式が使われるようになる。しかしこれはバランス調整が大変で、コアゲーマーにとっては易しくなり過ぎるという問題点が生じる事が多い。



6.自動回復(無限回復)の採用
 過去にも書いたのでここでは省くが  カジュアルなゲーマー向けにはメディキット方式だとどこかで大量に使ってしまって肝心な場所で足りなくなるという恐れがあるので、待ちさえすれば幾らでもフルまで回復可能な方式の方が理想である。これもプレイヤーによるが、嫌う人には当然好ましくない傾向となる。



 いろいろ書いたが、今後もゲームの製作予算が減る可能性は低いし、よりカジュアル化の波は広がっていくと思われる。残念ながらコアゲーマーには不遇の日々が続く事になりそうだ。注目の大作ほどそういう傾向が強くなるので、そういう物ではない中から良質の物を探し出すのが重要になって来るだろう。

「多勢に無勢」への5件のフィードバック

  1. Seiryu_PGD: E-T-O
    演出が主となるゲームについてはカジュアルな難易度でも構わない(難易度を上げても理不尽になるだけで面白さが増す訳でもないタイトルも多い)と思いますが、最近は面白さの観点からではなく、マーケティング的な観点から難易度を簡単にし過ぎてしまうゲームが多いかな?とは感じています。どっちつかずにするよりは寧ろ、演出場面はほぼカットシーンにでもしてしまえばと思うものも多いですね。

  2. Seiryu_PGD: Kardot
    私は、点数表を見てTimeShiftとCOD:WAWは過小評価しすぎという印象があります。という関係のない言葉から。私はDoomの様に難易度を突き詰めた作品、マリオみたいにクリアは、頑張れば出来るけど大きいコインを集めるのはちょっと難しい。ような難易度設定が無くても、行うことによって難しい難易度は結構感心します。
    難易度を付ける付けないは関係なく、練り込まれた難易度が受け入れられる。と思います。

  3. Seiryu_PGD: MIG-29
    >しかし百万本売った程度では成功とは言えないというレベルになってくると
    それに加えて、「HDゲーム機が壊滅的に売れていない」上に「残虐描写に対する規制が厳しすぎる」日本市場は「最早開拓の余地無し」と思われたのか、最早欧米メーカーの眼中に無くなってる様です。
    (「任天堂以外で唯一海外で成功した国内メーカー」であるカプコンでさえ「売上の大半を海外で回収できる体制にしたい」と言う程ですし)

  4. Seiryu_PGD: 46
    MW2なんかは制作費5000万ドルに対して宣伝費が2億ドルも掛かったらしいですね

  5. Seiryu_PGD: f
    俺が一番高い評価をしているのは、Unreal3
    制限はあってもMODが使えるとかマウスが使えるとか、あれはマルチでもいいやと思えるデキだった。

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